ブログ

アカウント管理の機能はカスタマーサクセスが持つべきか?

新しい会計年度を迎えると、テック業界では「組織再編」という毎年の恒例行事が行われます。

しかし、恒例行事と言いながらも、テック業界で新しいトレンドが出現しています。カスタマーサクセスマネジメント(価値実現とアダプション)とアカウントマネジメント(リニューアルとエクスパンション)の役割を統合する企業が現れてきたのです。これは通常、当たり前のことではないのですが、頻繁に起こってきている現象です。

ここで大きな疑問となるのは、「これらの役割は別々であるべきか」ということです。2023年以降もカスタマーサクセス(CS)がテック企業の生命線となることを考えると、この問いに答えること、あるいは少なくとも議論を重ねることが重要です。

今のところ、この問いに対する明確な答えがないのが業界の共通認識ではないでしょうか。そこで、この議論を整理するために、カスタマーサクセスマネジメント(CSM)とアカウントマネジメント(AM)の役割を融合させることの3つの長所と3つの短所を挙げてみます。皆さんの議論の参考になれば幸いです。

長所その1:コスト削減できる

これは自明の理ですが、CSMとAMごとに別々のメンバーをアサインすると、当然コストがかかります。これらの役割を一本化することで、その分の給料を節約することができます。これは、特に不況下で無視できない判断基準です。

短所その1:CS戦略と販売戦略を結びつける信頼性を失う

CSMが販売戦略に縛られたり影響を受けることで、顧客からの信頼性が低下する可能性があります。多くのCS部門にとっての大きな利点は、純粋に顧客の体験だけに焦点を当てるというストーリーです。販売戦略がCS戦略といかにうまく結びついていても、CSMとAMの両部門が組み合わさっていることは、顧客に誤った印象を与えかねません

長所その2:職種の増加を抑制でき、一貫した顧客体験を提供できる

CSMとAMを組み合わせることの利点は、コスト削減だけではありません。複数の役割があると、顧客から見て担当窓口が増えるため、顧客は混乱する可能性があります。役割を一つにまとめればそのような事態を避けることができます。また、CSMとAMの間の調整は時に困難なシーンに遭遇しがちです。両部門を統合することで、調整が大幅に容易になり調整コストを削減できる可能性があります。

短所その2:CSMの責任範囲が複雑になる

企業によって、特に複雑なサービスを提供する企業では、CSMの役割は非常に広範囲に及びます。そのため、CSMに加えてAMに関する責任まで負うことは無理があるかもしれません。CSMとAMの要求には、多くの場合、独自の戦略立案が必要であり、それが伝統的に2つの部門に分かれている理由でもあります。

長所その3:CS組織が固有の財務価値を持つことができる

条件がすべて同じであれば、自分の役割に財務的価値があると言える方が当然良いです。あらゆるビジネス上の意思決定が精査される経済情勢において、CSMとAMを組み合わせれば、カスタマーサクセスのROIはさらに明確化できます。このブログで説明しているようなリスクはあるものの、これは潜在的な落とし穴に見合うだけの大きな見返りになる可能性があります。

短所その3:CSMに今以上の専門的なスキルセットが必要になる

すべての人材が、コンサルティングと数値管理の両方をこなせるスキルを持っているわけではありません。CSマネージャーにアカウントマネジメントの役割も期待するのであれば、期待値が過剰となり、評価に歪みが生じて、優秀なCSリーダーの道を閉ざすことにもなりかねません。

考えるべき切り口

では、カスタマーサクセスとアカウントマネジメントは一つに組み合わせるべきなのでしょうか?

明確な答えはありませんが、考慮すべき2つの最も重要な変数は、平均的な顧客規模と、あなたの企業の成熟度だと考えています。

中小企業向けのビジネスでは、顧客の役割は1つにまとめられていることが多いため、CSMとAMの役割を組み合わせることはより想像しやすいです。対照的に、エンプラ企業では、対象となるペルソナが商業的な意思決定と製品に関する意思決定で別々である可能性があるため、多くの企業はCSMとAMのチームを別々に採用しています。また、両セグメントに販売する企業は、SMB顧客向けには両者の役割を融合させ、エンプラ顧客向けには両者の役割を分離させるかもしれません。

これと並行して、ビジネスが成熟するにつれて、多くの場合、企業は効率性と規模を追求するようになります。そのため、ベンダーは、企業やカテゴリーが設立された当初は、CSMとAMの役割を分けてスタートするかもしれません。このような時期には、CSMの仕事はエバンジェリストのように啓蒙的であり、商業的な業務とは完全に別の業務となります。会社が成熟するにつれて、両者の役割を統合することが容易に想像できるようになります。

まとめ

時間が経てば、企業がこれらの戦略を融合させ、より大規模で複雑な顧客には別々の役割を、小規模な顧客には統合された役割を持たせることも想像できます。AMとCSMを別々の役割として分離したり、統合した役割としてまとめたりするプロセスを反復する企業も存在します。

次世代のCSの姿を想像し、前途を切り開くにあたり、このような議論を続けていくことが重要です。このブログが一つの参考になり、皆さんの議論を通じて、新しいCS部門の姿を描きだすことにお役立ちできれば嬉しいです。

さらに詳しく知りたい方は、こちらのブログ「カスタマーサクセス組織構造の究極のガイド」を参照ください。