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なぜデジタルカスタマーサクセスが重要なのか?

景気後退、インフレの進行、投資の減少など、さまざまな逆風が吹き荒れたここ数カ月は、SaaSビジネスにとって厳しいものとなりました。過去数年間、ハイテク企業は前例のない成長を遂げましたが、2023年はまったく新しい時代です。顧客へのサービス提供、顧客の維持、ビジネスの成長方法など、すべてが変わりました。顧客維持は、もはや「あったらいいな」ではなく、重要な成長軸なのです。

その結果、SaaSビジネスは新規顧客の獲得よりも、既存顧客の維持による持続性のあるビジネスの構築に注力しています。アップセルやクロスセルを通じて生涯価値(LTV)を向上させ、収益を上げることに力を注いでいます。ベイン・アンド・カンパニーの「2023年カスタマーサクセスの動向と展望」レポートによると、顧客を維持することは、新規顧客を獲得するよりも少なくとも5倍費用対効果が高いと言われています。

カスタマーサクセス(CS)がSaaSにとって不可欠なものになっていることは間違いありません。しかし、3つの理由から、企業はもはや旧態依然としたCS運営を続けることはできないと考えます。

  1. 投資家は、総収益維持率(GRR)と純収益維持率(NRR)の改善と同時に利益率の改善を求めている
  2. B2Bの顧客は、24時間体制のサポートを期待している(B2Cの顧客と同様)
  3. CSチームは、より少ない人数でより多くのことをこなし、顧客の期待に応えることを求められているため、燃え尽き症候群に苦しんでいる

そこで、デジタルカスタマーサクセスの出番です。

デジタルカスタマーサクセスとは?

デジタルカスタマーサクセスは、オムニチャネルのエンゲージメントを通じてパーソナライズされたユーザー体験を提供することで、効率的に顧客導入、維持、成長を促進する戦略です。

これは、デジタルの利点を最大限活用したカスタマーサクセスです。AI、アプリ内ガイダンス、カスタマーコミュニティ、その他のブロードなカスタマーエンゲージメントプログラムは、カスタマーサクセスをデジタルカスタマーサクセスへと進化させています。

デジタルカスタマーサクセスは、デジタルと人間のインタラクションを融合させ、データ主導の自動化と集約されたリソースを活用することで、ユーザーがセルフサービスで対応できるようにします。その一方で、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の時間と労力を、顧客とビジネス双方にとって最も価値のある活動に向けて最適化します。

デジタルカスタマーサクセスが求められる理由

競争の激化: 市場におけるB2B SaaS企業の増加に伴い、競争は激化しています。デジタルカスタマーサクセスは、企業が新たなビジネスを獲得し、効率的に規模を拡大して競争優位に立つための重要な差別化要因です。例えば、同じ志を持つ仲間とのオンラインコミュニティは、特に現在のリモートワークが進んだ世界では、コミュニティ意識と帰属意識の醸成に役立ちます。

顧客の期待: 調査によると、デジタルチャネルを利用した方が、実際に好ましい体験が得られることが分かっており、顧客はその状態を維持することを望んでいます。セールスフォースの2023年版「コネクテッドカスタマーの現状」レポートによると、57%のユーザーが人とのやりとりよりもセルフサービスを好んでいます。顧客は、個人生活でシームレスなデジタル体験を期待するようになり、ビジネスでのやり取りでも同じことを求めるようになっています。こうした期待に応えられないB2B SaaS企業は、より優れたデジタル顧客エンゲージメントを提供できる競合他社に顧客を奪われるリスクがあります。例えば、アプリ内ガイド、オンボーディングチェックリスト、ナレッジベースを提供することで、タイム・トゥ・バリュー(TTV)を短縮することができます。

効率性の向上: デジタルカスタマーサクセスは、企業がプロセスを合理化し、コストを削減し、効率を高めるのに役立ちます。セルフサービスポータル、チャットボット、その他のデジタルツールは、顧客が必要なものを迅速かつ容易に見つけるのを支援し、人的対応の必要性を減らすことができます。例えば、企業はセルフサービスポータルを導入することで、顧客がCSMやサポートに問い合わせることなく、質問に対する回答を見つけられるようにすることができます。

顧客維持: ハーバードビジネスレビューの2022年「ポジティブな製品体験で成長を達成する」と題したレポートによると、回答者の81%が、強力なデジタル製品体験がビジネスの成長にプラスの影響を与えることに強く同意しています。優れたデジタル顧客体験は、顧客維持率を向上させます。顧客は、必要なときに必要な場所ですぐに助けてくれるなど、ポジティブな経験を提供する企業との取引を継続する可能性が高くなります。例えば、主要なアダプションプログラムを自動化することで、顧客が製品で価値を実現するまでの道のりを加速させることができます。

デジタルカスタマーサクセスの活用方法

DCSがCSチームの仕事をより簡単かつ効率的にし、成果を向上させる方法(ユースケース)をいくつかご紹介します。

自動化して効率性とスケーラビリティを

DCSは、CSMが従来のCSやハイタッチモーションではできなかった、より多くのユーザーベースや新しい方法でのアプローチを可能にします。データドリブンな自動化により、企業はカスタマーサクセスの取り組みを拡大し、何千、何百万ものユーザーに一貫した体験を提供することができます。例えば、チャットボットが日常的な顧客からの問い合わせに対応することで、カスタマーサクセスチームはより価値の高い活動や収益を生み出す活動に集中することができます。

パーソナライズ化して、より洗練されたカスタマージャーニーを

CSチームがデジタルチャネルの活用を阻む最大の誤解のひとつは、パーソナルタッチを失うことへの恐れです。デジタルカスタマーサクセスなら、顧客データと製品分析を使って、個々の目標やニーズに基づき、カスタマーサクセス戦略をカスタマイズすることができます。例えば、顧客のヘルススコアは、製品目標の達成を支援するアダプションジャーニーの引き金となります。

高度化された顧客体験で賢く働く

今後、AIの役割はデジタルカスタマーサクセスにとって極めて重要になります。AIを搭載したツールを活用することで、企業は潜在的な解約リスク、アップセルの機会、コンテンツ推奨、自動更新モーション、マルチチャネル分析による顧客満足度の改善点を積極的に特定し、対処することができます。その好例が、解約リスクのある顧客を特定するための予測分析や、エグゼクティブチェックインやエグゼクティブビジネスレビュー(EBR)の事前準備に役立つスマートサマリーの活用です。

デジタルファーストのマインドセットで高い生産性を発揮する

デジタルファーストのアプローチで事業を展開する組織は、オムニチャネルツールを活用して効率性、革新性、成長性を高めています。カスタマーサクセスのリーダーは、変化する顧客の期待に適応し、社内プロセスを合理化し、効率的に顧客の維持と成長を促進するために、アプリ内エンゲージメント、カスタマーポータル、Eメールキャンペーンなどのデジタルチャネルやテクノロジーを採用しなければなりません。同じ2022年のHBRのレポートによると、回答者の39%が、「製品体験イニシアチブを実施することで、より高い収益性を達成した」と回答しています。

新しいキャリアの成長機会を手にいれる

デジタルカスタマーサクセスの進化は、次のような数多くの革新的なキャリアの機会を生み出しています。 デジタルCSリーダーやマネージャー、デジタルCSMやプールCSM、カスタマーマーケティング、カスタマーライフサイクルマネージャー、カスタマーアダプションマネージャー、CSコンテンツ開発者、デジタルCSストラテジー、デジタルCS Opsなどです。

デジタルカスタマーサクセスは、企業が競合他社との差別化を図り、顧客の期待に応え、NRRを向上させるのに役立ちます。企業がパーソナライズされた体験をどの程度の規模で提供できるかが、最終的に2023年以降の組織と顧客の成功を左右するでしょう。

デジタルカスタマーサクセスについてより深く学びたい方はこちらのアーカイブウェビナーをご覧ください。