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ヘルススコアはカスタマーサクセスの実現には必須!
主な指標やメリット、運用ポイントを解説

ヘルススコアは、様々な情報を組み合わせて顧客の製品やサービスに対する健康度を測ることができるます。顧客の継続利用を予測でき、アップセル・クロスセルの適切な提案タイミングを把握できるため、安定した収益確保につながります。そのためヘルススコアを把握して対策を組むことは、カスタマーサクセス活動において重視されています。
本記事では、カスタマーサクセスにおけるヘルススコアの重要性やメリット、運用ポイントなどについて解説します。ヘルススコアについて知りたいなら、ぜひ参考にしてください。

目次

  • カスタマーサクセスにおけるヘルススコアの重要性
  • ヘルススコアに使われる主な指標
  • ヘルススコアをカスタマーサクセスに導入するメリット
  • ヘルススコアをカスタマーサクセスに導入する手順とポイント
  • まとめ

カスタマーサクセスにおけるヘルススコアの重要性

顧客の製品やサービスの健康状態を示すヘルススコアは、カスタマーサクセス活動の目的達成のために重要な指標として活用されています。下記にて詳しく解説します。

ヘルススコアとは

ヘルススコアとは、顧客が健全に製品やサービスを利用しているか、顧客が満足しているかを示す指標です。主にカスタマーサクセスを運用する際に用いられ、顧客が自社の製品やサービスを継続利用するかどうかを判断するために利用します。カスタマーサクセスが適切に顧客をサポートできていればヘルススコアは上がるため、リスク検知やサポートの改善に役立ちます。

ヘルススコアはなぜ重要か

カスタマーサクセスの目的は顧客の成果の達成による契約の維持と拡大です。ヘルススコアによって顧客の「声なき声」を明確にして、変化を察知しながら顧客の状況を可視化できます。

ヘルススコアを活用することで以下のようなアクションが可能です:

  • チャーン予備軍を洗い出すことができ、未然に解約を予防できる
  • 適切なタイミングでの適切な情報提供が可能となる
  • ビジネスの拡大チャンスを把握する
  • 前向きな顧客を洗い出し事例化顧客の選出が可能

これらを把握するためにも、ヘルススコアの設計・実装はカスタマーサクセス活動の重要なタスクの1つです。

ヘルススコアに使われる主な指標

ヘルススコアとして使用される指標は目的や目標によって異なり、実際には複数の指標を組み合わせて顧客分析や戦略立案に用います。ここでは、ヘルススコアの指標となる主要なものを紹介します。

DEARモデル

Gainsightでは、顧客の健全性を測る方法として「DEARモデル」を提唱しています。
DEARモデルとは以下の頭文字を取って命名したヘルススコアの設計フレームワークです。

Deployment:ユーザーは正しく利用開始できているか
Engagement:ステークホルダーとエンゲージできているか
Adoption:製品を広く/深く活用してくれているか
ROI:製品の価値を感じているか

本項ではD・E・A・Rそれぞれの項目について解説していきます。

Deployment:ユーザーは正しく利用開始できているか

プロダクトやサービス導入直後の顧客が初期設定やオンボーディングをきちんとできているかの指標です。つまり製品が正しく使える状態になっているか?ということです。
(例)
・購入されているユーザー数に対してデプロイされている数の割合が何%以上か?

・オンボーディングが完了している数

Engagement:ステークホルダーとエンゲージできているか

ここでは、ステークホルダーとエンゲージできているのか?を見ていきます。ステークホルダーとは、ご契約いただいている製品やサービスの活用や更新をしてもらうにあたって、必ず関係を持つべき役割の人との接点です。それは一人とは限りません。ちなみにGainsightではオペレーション担当、部長レベル、エグゼクティブレベルなどペルソナを定義しており、担当レベルの方とは月に2回以上、エグゼクティブレベルとは年に1回会ってるか?などをスコアに反映しています。
(例)
・ある一定レベル以上の位の方と3ヶ月以内にビジネスレビューを実施したか
・キーとなるユーザーがイベントに参加いただいているか

Adoption:製品を広く/深く活用してくれているか

これは製品を活用しているか?ということです。ただ活用と言ってもGainsightでは広さと深さを分けて管理しています。深さ、はライセンスをデプロイされたお客様がちゃんと使ってくれているか?を見ていきます。デプロイはされたけど、アクティブかどうか?です。広さは、お客さんが製品をフル活用できてるか?を見てます。製品の中で複数機能がある場合には、どれくらいの機能数を使ってくれているか?キーとなる機能を使ってくれているか?です。
製品の活用データ取れない場合もあると思います。その場合には「活用してくれているか?」を違う方法で見ることができるかを考えます。例えば、最新のバージョンを使ってるか?とかサポートにきているチケットの数とか。トレーニングを完了している数。などです。ここのAdoptionのゴールはお客さんがちゃんと使えているか?を知りたいので、それをダイレクトに分からなくても傾向値として捉える情報は何か?を考えていきます。

ROI:製品の価値を感じているか

ここでは顧客が製品やサービスの価値を感じているか?をみていきます。もし、提供しているツールの中でデータで取れる方法があればそちらを活用します。多くの場合、データで取ることが難しいと思います。その場合には顧客とのビジネスレビューなどであらかじめ定義したゴールに対しての成果をお伝えし、エグゼクティブやステークホルダーの方と合意が撮れたかを元に判断していきます。それ以外にもアンケートの中で確認していくことも可能です。

ヘルススコアをカスタマーサクセスに導入するメリット

ヘルススコアをカスタマーサクセスに導入することで、チャーンレートの改善や適切なタイミングでの提案などが可能となり、自社の収益アップにつながります。下記にて具体的に解説します。

顧客に合わせた効率的な対応ができる

ヘルススコアで顧客の健康状態を把握すると、それぞれに適したカスタマーサクセス活動を実現でき、顧客を効率的に最短距離で成功へと導けます。また、同じレベルの顧客をまとめてセグメントを行い管理する際にも、ヘルススコアは役立ちます。

チャーンレート(解約率)を改善できる

顧客のヘルススコアの変化によって、解約の兆候をつかむことが可能です。顧客行動のわずかな変化を察知することで解約を回避でき、事前に対策を組むことでチャーンレートを下げられます。サブスクリプションなどSaaS型のビジネスモデルにおいて解約は収益に大きな影響を与えるため、ヘルススコアによる解約の兆候把握と回避は、重要な対策です。

アップセル、クロスセルのタイミングがわかる

ヘルススコアを測定すると、アップセルやクロスセルのベストタイミングを探ることができます。アップセル・クロスセルが成功すれば、LTVや収益向上につながります。

ヘルススコアをカスタマーサクセスに導入する手順とポイント

ここからは、ヘルススコアをカスタマーサクセスに導入する手順とポイントについて解説します。運用するには、特にPDCAをしっかりと回すことが重要です。

現在の顧客の健康状態を把握する

最初に、顧客がどのような状態であれば健康なのかを定義づけます。CSMが感覚的に「Green(健全)」だと思う顧客の特徴が何かを考えていきます。合わせて「Red(リスクがある)」と感じている顧客の特徴を考えます。これらの特徴をデータとしてこれ全部を捉えられて初めてお客さんの「状態」がわかる訳です。これらを統合したヘルススコアが作れたら、ヘルススコアを信頼してアクションをすることができます。
ヘルススコアを作るときに「今あるデータがこれだから、これを見よう」と言うことではなく、顧客がGreenやRedだと思った感覚を数字やデータでどのように表現していくか、そしてその変化をキャッチすることが大切なのです。

ヘルススコアを作るユースケースを明確にする

最初にヘルススコアを作るユースケース(製品、セグメント、ゴール)を明確にします。このスコアを見て何を判断したいのか?複数製品をもたれている企業の場合、まずは製品Aから始めるというのも良いですし、オンボーディングに課題があるお客様はオンボーディングに特化したスコアを作るのも良いかもしれません。何よりこの「赤」が何を示すのかを明確にすることが大切です。

ユースケースを判断するために必要なデータの整理

次にこのユースケースを判断するために必要なデータを整理します。使えるデータがこれだからこれをベースにスコアを作ろう!って考えがちですが、必ずこのヘルススコアで判断したいユースケースを明確にした上で、必要なデータが何か、既にあるか、などを確認していきます。データ取得の難易度も考慮のポイントになります。

DEARフレームワークに当てはめる

DEARフレームワークに当てはめていきましょう。最初に決めたヘルススコアで判断したいユースケースと必要なデータを組み合わせて始められるところから始めます。DEAR全て埋まらなくても問題ありません。最小構成で、簡単に入手して接続でき、目的を達成できるものから作っていきます。

各項目のウエイトと各色の閾値を決める

各の項目のウエイトとGreen、Yellow、Redの閾値を決めます。ウエイトとは、DEARのなかでDが最も大事なので、スコアリング上50%の重みを持たせようという考え方。Green、Yellow、Redの閾値とは、例えばデプロイが50%以上がGreenなのか75%以上で始めてGreenとして判断するのか。という考え方です。また、ここで考慮すべきポイントとしては、各色がどれだけの割合で表示されるかです。Redのアカウントが全体の半数以上を締めてしまうような閾値にすると、その信憑性が疑われてしまいますし、アクションしなくてはならない数が膨大になりすぎて手が回らなくなる危険性があります。検知することだけではなく、その後その検知した内容をもとにアクションすることを考えた上での閾値設定をするようにしましょう。

PDCAを回す

何より重要なのがPDCAを回すことです。最初に作ったヘルススコアが必ずしも正しい訳ではありません。例えば、最初に5つの項目に対してウエイトと閾値を決めて運用を始めます。3ヶ月後に振り返りを実施し、解約になった顧客は正しく「赤」で表現されていたか。更新された顧客は「緑」で表現されていたか。データと照らし合わせて確認していきます。また、CSMに意見を聞きながら修正していくのも良いでしょう。定量的、定性的なデータをもとにウエイトや閾値を変えて修正を繰り返すことで「意味のあるスコア」を作り上げます。なお、ここでしっかりとヘルススコアが最終的には結果指標であるチャーンレートやNRR(売上継続率)と連動しているかもみていく必要があります。ヘルススコアを向上させることで、結果指標も向上する。そのロジックが出来上がることで、先行指標であるヘルススコアの改善に対して企業として努める必要があることが言えるようになります。

スモールスタートで始める

繰り返しになりますが、「意味のあるスコア」を作ることが何より重要です。PDCAを回しながら改善をしていき、その中でさらに顧客の状態をより細かく把握するために必要な情報を追加していきます。
また、新しい機能や製品が増えるなど、自社のビジネス環境が変わってきた際にも項目を見直すのも良いでしょう。常に正しく誰もが信用されるデータを作ること。常にこれを考えながら回してください。
裏を返すと、最初からあまりにもデータが多いと何が正しいかの判断がとても難しくなります。そのためにもまずはスモールスタートで始めていただき、ある程度正しく見えてきた時にさらに詳細を知るためには何を足したら良いか?を考えることをお勧めします。

まとめ

ヘルススコアは、顧客の継続利用を予測できるほかチャーン予備軍を洗い出し、顧客に適切な提案も可能とします。これらは安定した収益を生むため、ヘルススコアはカスタマーサクセス活動において重視されています。

 

ヘルススコアとして用いる指標は、顧客の目的や目標によって異なり、プロダクトやサービスの活用状況だけではなく、心理的な満足度や愛着度なども把握する必要があります。

世界トップシェアのカスタマーサクセスプラットフォームであるGainsightでは、顧客の状態を正確に把握できるヘルススコア設計フレームワークの「DEARモデル」を提供しています。D・E・A・Rといった4つの項目を計測することで、効率よく顧客のヘルススコアを把握できるシステムです。
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和久井 かおり/Gainsight 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター
和久井 かおり/Gainsight 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター

慶應義塾大学卒業後、大手ハードウェア企業のエンタープライズ営業として新規と既存営業の業務を経験。その後スタートアップ企業にて様々なロールを経験する中でカスタマーサクセスというコンセプトに出会い、惚れ込む。2015年からはアドビにてカスタマーサクセスに従事。担当カスタマーサクセスマネージャー、カスタマーサクセス部門のマネージャー、シニアマネージャーを経て、カスタマーサクセスの実行とそれを実現するために必要な要素/組織について学ぶ。2022年にGainsight Japanに入社し、カスタマーサクセスチームを牽引。