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デジタルカスタマージャーニーの構築

カスタマーサクセス(CS)は、当初はデジタル化されたものではなく、契約後のお客様との関係を維持するためのプラクティスの集合体として始まりました。

企業は自社の価値をより深く理解し、導入の改善方法を学び、ビジネスの進展に合わせて顧客にサービスを提供するための新たなソリューションを開発することで、その方法を模索していました。このプロセスでは、進化するニーズに対応するために新しい部門やカスタマーサクセスの人員が追加され、多くのハンズオンでの活動が必要とされました。

今日、企業は顧客との関係を築くために、より多くの時間と資源を費やしています。しかし、プレミアム顧客が製品からより大きな価値を得られるよう支援することに注力する中で、リーダーたちは、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)を追加することなく、すべての顧客に対して高いリテンション、ロイヤルティ、顧客支持率を再現するにはどうすればよいかを当然ながら考えています。その答えは、デジタルカスタマーサクセス(DCS)にあります。

DCSは、カスタマーサクセス活動をスケールし、人によるサポートを介さないテクノロジータッチソリューションによって、企業がより多くの顧客を効率的に支援できる体制を実現することができます。結局のところ、多くの顧客は問題を克服するためのリソースにオンラインでアクセスすることをすでに期待しているのです。
しかし、デジタルサポートは広く受け入れられているものの、DCSの機能をゼロから構築するのは容易なことではありません。

CSMがDCSのカスタマージャーニーを構築

CSMがハイタッチアプローチと統合データ分析を使って、カスタマージャーニーのプロトタイプのプロセスを構築するのをサポートします。まず、CSMはハイタッチの活動で実施している経験を活かして、セルフサービスの顧客に対する必要な知識の整理、共通の対応内容、その他提供したい顧客体験を構築することができます。その後、カスタマージャーニーの4つの柱とその相互関係を理解した上で、最も成功したプロセスの自動化に着手することができます。

  • オンボーディング
  • 活用
  • 価値の実現
  • 更新

4つの柱にそれぞれ別のヘルススコアを割り当てることを検討していきます。例えばオンボーディングの段階では、様々なセグメントの顧客に対しての期待値を設定し、テクニカルタッチユーザーにとって良いユースケースを探します。次に重要業績評価指標(KPI)を特定します。顧客がサービスを開始したばかりの段階で価値を感じているかどうかをどのように判断するのか。これらの整理を通して、カスタマージャーニーの各ステップで可能な限りパーソナライズされた自動化プロセスを実現します。

CSMはDCSの運用を一から構築することで、人またはデジタルとのハイブリッドな活動を通して顧客の課題解決するためのリスクや拡大のシグナルを特定することができます。カスタマージャーニーに関する統合的なデータがあれば、プロセスを自動化し、主要な課題に集中することができます。

DCS導入の初期段階では、CSMはカスタマージャーニーの各ステップを通じてお客様を支援します。CSMはどのような活動が最も効果的か、どのようなリソースがすでにあるか、どのようなソリューションをお客様が最も望んでいるかを把握します。お客様一人ひとりの状況を各ステップ毎で把握することで、お客様との関わり方をカスタマイズし、お客様が望むパーソナライズされた対応を行うことができます。その結果、企業はこれらの活動を自動化されたソリューションに反映させることができるのです。

主要なステークホルダーとの協力

データはあらゆる段階でカスタマージャーニーに価値をもたらすために不可欠です。様々なのユースケースを持つ複数の顧客セグメントを調査することで、顧客がどのように製品から価値を得るかについて必要な情報を得ることができます。そしてDCS機能を構築する際には、組織全体や他社に目を向け、インスピレーションやベストプラクティスを得るようにしましょう。

  1. 製品の使用に関するデータをマーケティングやカスタマーサクセスのインタラクションに結びつけ、顧客の嗜好を把握しましょう。アプリ内のメッセージは、顧客から学ぶための1つの方法ですが、使用率、製品の特定の領域での滞在時間、および使用されていない機能を調べることもできます。製品以外の部分で顧客の要望をより深く知るには、メールの件名でA/Bテストを行うなど、マーケティング手法を活用します。パーソナライゼーションのレベルを変えて、実験してみましょう。クリックスルー率を評価するのも一つです。例えば、顧客はすぐにアクセスできるビデオを好むのか、それともウェビナーへの招待を好むのか?クリック数のデータからこのような情報を得ることができます。顧客の好みを知ることで、今後のコミュニケーションをより成功に導くことができます。
  2. 組織全体で協力し、お客様が各ステージに進む際の課題を特定します。無駄なすれ違いはないか?ミスコミュニケーションはないか?例えば、マーケティングチームとカスタマーサクセスチームが同じ顧客に同じような情報を提供していませんか?マーケティング、カスタマーサポート、コミュニティチーム、セールス、リニューアルチームから顧客データを収集します。チーム間のコラボレーションにより、組織は全体を俯瞰してカスタマージャーニーの各ステップをつなぐことができます。分析ツールは組織全体のデータを統合し、サイロ化したタッチポイントを統合し、各ステージにおけるお客様の状態を明確に把握するのに役立ちます。
  3. 競合他社ではなく、デジタルの最前線で活躍するテクノロジーファーストの企業にも目を向けていきます。彼らは、DCSのエキサイティングな可能性によってチームを活性化させ、ビジョンとミッションを磨くヒントをくれるでしょう。純粋なデジタルCSを実現できる企業もあれば、ハイブリッドモデルを選択する企業もあります。自社のカスタマージャーニーのステージに合致するような、革新的な外部ソリューションを特定することができます。

テクノロジーを活用する

特定した分野に対応するためのテクノロジーを構築する準備が整ったら、将来的には以下のようなアプローチが考えられます。

  • 製品主導のカスタマーサクセス:顧客は製品から離れることなくサポートを受けることができます。製品とのタッチポイントを増やすことで、エンゲージメントとリテンションが向上し、価値創造までの時間が短縮されます。
  • 人工知能(AI):AIの登場により、顧客がいつ、どこで、何を必要としているのか、より的確に把握できるようになりました。アプリ内のメッセージングにとどまらず、より多くのAIにインスピレーションを得ることができます。
  • より良いパーソナライゼーション:DCSの目標は、単一のエクスペリエンスを構築し、すべての顧客に展開することではありません。その代わりに、各顧客固有のジャーニーに対して個別にリソースを提供することを目指していきます。企業は、大規模な顧客グループをセグメント化し、そのデータを活用して、顧客の個々のジャーニーをシームレスにするための戦略を必要としています。ユーザーの体験やタッチポイントを一箇所に集約することは、摩擦を減らすための一つの方法です。

Gainsightでデジタルの未来を築く

スマートなDCSは、製品の使い方や価値を得る方法を教えるのではなく、顧客に教えると同時に顧客から学びながらパーソナライズされた体験を提供することができます。しかし、すぐに成功する万能なボットはまだありません。カスタマージャーニーを深く理解した人が、CSMとして機能する製品を作る必要があるのです。適切なアプローチによって、製品は必要なときに必要な場所で支援できるカスタマーアドボケートとなり、顧客はより早く価値を得て、顧客とのより長いお付き合いにつながります。

和久井 かおり/Gainsight 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター
和久井 かおり/Gainsight 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター

慶應義塾大学卒業後、大手ハードウェア企業のエンタープライズ営業として新規と既存営業の業務を経験。その後スタートアップ企業にて様々なロールを経験する中でカスタマーサクセスというコンセプトに出会い、惚れ込む。2015年からはアドビにてカスタマーサクセスに従事。担当カスタマーサクセスマネージャー、カスタマーサクセス部門のマネージャー、シニアマネージャーを経て、カスタマーサクセスの実行とそれを実現するために必要な要素/組織について学ぶ。2022年にGainsight Japanに入社し、カスタマーサクセスチームを牽引。