2025.06.07
世界最大級のカスタマーサクセスイベントがラスベガスで開幕
2025年5月28日,29日の2日間で、世界中のカスタマーサクセスと収益担当のプロフェッショナルが集結する「Pulse 2025」が、米国ラスベガスにて盛大に開催されました。今年の基調テーマは「Do More With Agents(AI Agentの力でより多くの成果を実現)」。”Do More with Less(より少ない労力でより多くを実現)”というすべての企業が奮闘する課題に対して、AIの力でチームの可能性を拡張し、顧客とより深い関係を築くための戦略と最新テクノロジーが披露されました。
Gainsight CEOのニック・メータ氏によるオープニング講演は、ミュージカル『ウィキッド』にインスパイアされた演出で、テクノロジー、ユーモア、そして実践事例が融合した印象的なセッションとなりました。氏は、「限られた予算・人員でも、AIエージェントを活用すればより大きな成果を創出できる」とし、次世代型CSチームの姿を提示しました。
CustomerOS:顧客視点で再定義されたカスタマージャーニー
Pulse 2025では、Gainsightの新プラットフォームCustomerOSの正式発表も行われました。
これまで、多くのSaaS企業は「自社プロセス中心」にカスタマージャーニーを設計してきました。しかしCustomerOSは、その常識を覆します。
具体的には、Land、Learn、Adopt、Connect、Succeedといった顧客が実際に体験するプロセスを中心に設計されており、以下のような製品群によって構成されています:
- Skilljar:オンデマンド学習と認定で顧客の自律的成長を支援
- Gainsight PX:アプリ内のエンゲージメントと分析で製品の定着を促進
- Customer Communities:顧客同士のつながりと学びをサポート
- Gainsight CS:顧客の望ましい成果の達成を支援
- Staircase AI:顧客関係の健全性とリスクを可視化し、迅速な対応を可能に
ここにAtlasのAIエージェント群を加えることで、オンボーディングから成果実現までを統合的に管理できる単一のオペレーティングシステムが完成します。
Atlas発表:人に仕えるソフトウェアの幕開け
▼動画▼
https://play.vidyard.com/rRAwpfQNocfUyajVA1oDfi.html
今回の目玉となったのが、Gainsightが正式リリースした次世代AIエージェント群「Atlas」の発表です。
Atlasは、オンボーディング、製品定着、解約リスク特定、更新、コミュニティ運営までをAIが支援することで、顧客体験全体を高度にオーケストレーションする新たなソリューション群です。業界のベンチマークによると、AI主導の更新管理は、最大130%の投資収益率と95%の予測精度を生み出すことができると言われています。
AIによる顧客支援の代表格「Staircase AI Agent」は、すでに導入企業で定量的成果を生み出しています。例えばRockwell Automationでは、エスカレーションのリスクを従来より30%以上早期に特定し、CSMによる事前対応が可能に。既に明確なROI(投資対効果)が確認されており、老舗製造業のCS改革においてAIの力が明確に発揮されています。
また、Docusignでは、GainsightのRenewal AI Agentを活用して、パーソナライズされたロータッチ更新施策を大規模に展開。これにより、人手をかけずにロータッチセグメントの更新率は上昇し、チームはより戦略的な活動へシフトできたと報告されています。
Atlasファミリーにはこの他にも、Slack上でのリアルタイム顧客分析が可能なSlack AI Agent、プロダクト利用状況を分析して活用促進のための提案を提示するAdoption AI Agent、コミュニティの安全と健全性を自動管理するModeration AI Agentなどがあり、一部はすでに提供開始されています。
Keynoteの中では、Adoption AI Agentのコンセプトデモが行われ、ロングテールの顧客に対して、CSMではなくAdoption Agentをアサインすることで、情報の分析から最適なアクションの決定までを自動化し、CSMの工数を使うこと無く個別ができる様になっていました。更に、個別化したメールの中には製品の利用を促すための動画が埋め込まれており、AI Agentが顧客担当者の言語を理解し多言語に対応した動画までを自動的に生成するという、まさに人がアサインされているかのような支援をAIの力によって顧客に届ける事ができるようになっていました。
AIエージェントを最大限に活用することで変化が起きる、カスタマー・サクセスチームの未来はは以下のように説明されていました:
- CSマネージャーは、受け身のトラブル対応から、積極的な価値提供へとシフト
- プロダクトチームは、機能追加ではなく“成果”と“採用”にフォーカス
- 教育チームは、顧客を製品の専門家に変える仕組みを提供
- コミュニティマネージャーは、投稿の管理ではなく「つながりの創出」に集中
- そして何より、顧客自身が、AIエージェントの力を借りて目標を達成できる世界が実現されます
日本初の快挙:小林香菜氏がGainstar Gold Tierを受賞
Pulse 2025では、日本からも嬉しいニュースが届きました。ソフトバンク株式会社 カスタマーサクセス本部の小林香菜氏が、日本人として初めてGainstar Gold Tierを受賞。世界中の受賞者とともに、ステージ上で表彰されました。
Gainstar Programは、Gainsightを活用するユーザーの中から、製品理解・活用力、コミュニティ貢献、ユーザー支援活動などをもとに選出される表彰制度です。小林氏は、国内初のユーザー会の発起・運営、コミュニティ投稿、製品アイデアの共有、他社支援などを通じ、日本におけるカスタマーサクセスの推進に大きく貢献してきました。さらに、Gainsight Admin Level 1認定もいち早く取得し、社内外でのスキルと知識の伝播を担ってきました。
「Gainstar Programを通じて、多くのユーザーの皆さまとつながり、学び合える機会を得られたことに心から感謝しています。これからも皆さんと一緒に、カスタマーサクセスをさらに盛り上げていきたいです。」
– 小林香菜氏 コメント
テクノロジーとコミュニティの交差点に立つPulse
Pulse 2025は、テクノロジーの進化とコミュニティの力が交差する場であり、AIと人間が協働するCSの未来像を鮮やかに描き出しました。AIエージェントの登場により、業務の自動化にとどまらず、定着率向上・リスク軽減・更新精度向上といった“成果”の創出が現実のものとなっています。
日本からの参加者は、Keynoteの発表や各種セッションだけでなく、Gainsight USのエグゼクティブやUSの先進事例を実現しているリーダー企業とのラウンドテーブルを通して、Pulseでしか得ることができない学びを得ていました。
Pulseの中心には、製品の可能性を最大限に引き出し、他者と学び合いながら実践するユーザーの姿があります。現地での参加者同士の交流を通して、日本からの参加者間だけでなく、様々なグローバル企業との繋がりによって、実際のCS現場で生まれたベストプラクティスや失敗からの学びを、ユーザー自身が共有する「共創型イベント」を実現することができ、過去最高に熱量の高いPulseとなりました。