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大企業でCSチームを新設するための5つのステップ

SaaS企業の登場と共に、カスタマーサクセス(CS)という新しい機能が注目を集めるようになりました。従来の大企業でも、顧客が製品から価値を実現し、チャーンを減らし、効率的にエクスパンションできるよう支援する上で、この新しい機能の居場所を見出してきています。

この傾向は、SaaSモデルが発想の転換を促した2000年代半ばに始まりました。それまでは顧客の獲得が重要な成長要素でした。しかし突然、顧客の維持が重要な課題となりました。製品が月単位の契約で利用される場合、プロバイダーを乗り換えるのは簡単です。迅速な価値向上を実現できないと判断した顧客は、最初に選んだプロバイダーに固執する理由がほとんどないことに気づきます。顧客を失うと成長が鈍化するため、高成長企業は顧客が販売後の製品から必要な価値や成果を確実に得ることに重点を置くようになりました。

大企業はカスタマーサクセスに重点を置くSaaSスタートアップと競合するようになっています。大企業はまた、販売後のサポートに対する顧客の期待値の変化に巻き込まれていて、より多くの大企業がこのCSモデルへと向かっています。それも無理はありません。デロイトの調査(英語サイト)によると、CSチームの半数が、10%以上のアップセルとクロスセルの収益を達成し、顧客満足度が20%以上上昇したといいます。フォレスターの調査(英語サイト)では、CSチームが顧客維持率を24%向上させたとしています。

しかし、大企業におけるカスタマーサクセス機能・組織の構築は、SaaSスタートアップほど簡単ではありません。なぜでしょうか?

まず、大企業には長年にわたって確立されたビジネスモデルと目標があります。また、機能横断的な利害関係者を擁する成熟した組織構造を持っているため、意見の合意を得ることが難しいのです。大企業は、既存のシステムや業務の中で、顧客のニーズに最適なサービスを提供するために、どのようなフレームワークを構築すべきなのでしょうか?オンボーディング、サクセスプランニング、アダプション、利用最適化、高度なカスタマーサポートは必要でしょうか?それらはお互いにどのように連携できるのでしょうか?成功のために新しいチームを立ち上げる基本は一体何なのでしょうか?

そんな疑問にお答えすべく、大企業がCSチームを立ち上げるために必要なステップを5つにまとめてみました。順番に読み通してみてください。

ステップ1:社内調整から始める

(「筋肉はマッスル」みたいな話ですが)大企業は大きいです。そして成熟しています。加えて、複数の利害関係者や機能を抱えており、そのほとんどは、長年サイロ化された思考によって目標を実現してきました。このような状況にCSチームを投入しても、最高の価値を実現するための環境とは言えません。このような状況では何が役に立つのでしょうか?それは、前もって大まかな全社レベルでの調整を行うことです。

ここでは、チームを同調させるための予備的なステップをいくつか紹介します。

  1. 重要な機能から着手し、コミュニケーションチャネルを構築する: 部門によっては、CSとの継続的なコラボレーションを計画し、新たな組織的機能を実現する必要があります。例えば、CSがカスタマーサクセスデータを生成できるようにすることで、営業部門は顧客ターゲティングの指針を得ることができます。製品開発部門なら、CSの利用データが、生涯顧客維持率を向上させる機能の開発に役立ちます
  2. 経営幹部からのサポートを得る: 大局的な考えを持つ経営者は、CSの指標がビジネス目標に合致していることを知る必要があります。CS導入の賛成派は、顧客の成功が会社の利益であるとすでに理解しているかもしれません。しかし反対派はそうではありません。CSチームは、定量的なデータに基づいたストーリーで反対派を説得し、組織の目標がCSとどのように関連しているか経営幹部に示すことから始める必要があります
  3. 会社のフォーカスを明確にする: CSチームは、すべての部門をまたがって、より多くのビジネス価値を実現するために必要なアーキテクチャの開発を支援できます。また、コンテンツ作成のギャップを特定し、それを埋める方法を開発することもできます。これらのメリットは、他の部門にも波及し、全社的に集中する対象を明確化することにつながります。しかしその前に、正しいデータを収集し、ビジネスインテリジェンスに変換するために、会社の目標を明確にする必要があります。

ステップ2:複数プロダクトによるクロスセルのマインドセットを育む

大企業では複数の製品を取り扱っています。その大企業の新設CSチームは、データによって顧客の成果を促進することに専心しているため、成熟度の高くない単一製品だけ扱っている企業のCS担当者よりも複雑な仕事を抱えています。複数の製品があるということは、複数の種類のデータがあるということだからです。これらの大企業の顧客は、多くの製品ニーズを持ち、目標もバラバラで、接点も複数あることが多いです。

まずは、主要な製品やニーズに対する直接的な価値を前面に押し出したアセットを開発することから始め、その一方で、クロスセルを含んだエクスパンションを計画します。実行のヒントをいくつか記載します。

  • できるだけ早い段階で、顧客の価値実現を優先するオンボーディングアーキテクチャを使用しましょう。顧客の価値実現に必要な機能の導入にフォーカスし、最初から全機能や全製品の活用を促進するような総花的なアプローチは厳禁です
  • アプリ内のマイルストーン、リマインダー、ヒントを活用しましょう
  • 顧客の短期、中期、長期の目標をもとに、複数の製品戦略を検討しましょう。そして、利用率やエンゲージメントデータを使って、ロードマップ、コンテンツ、製品企画を構成し、さらに個別のカスタマージャーニーを作成しましょう

ステップ3:指標を設定してエクスパンションにフォーカスする

あなたが作成する複数の製品マップはエクスパンションの鍵となります。様々な段階でより多くの顧客の価値達成を支援する方法を予測するのに役立つためです。また、複数の製品マップは他の多くの部門やKPIを巻き込むデータの課題でもあります。ここでは、エクスパンションを指標の中心に据えておく方法をいくつか紹介します。

  • オンボーディングからチャーン、エクスパンションまで、成功の複数の要素を包括する指標として、NRRを優先しましょう。NRRは、信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)を部門間で共有し、チームを共通の目標に集中させるのに役立ちます
  • 全員がNRRという北極星(ノーススターメトリック)に集中したところで、今度は粒度を上げましょう。CSチームに、製品利用、アカウント成長、アップセル数、アンケート、全体的な関係、価値達成までの時間(Time to Value)などから、エクスパンションを検討する際に使用する最も重要な指標を特定させましょう
  • KPIと顧客データを組み合わせましょう。顧客データベースから、顧客が通常いつアップグレードし、エクスパンションするかについての手がかりを得ましょう

ステップ4:最高の生産性を実現するためにCS Ops機能を設ける

より多くの顧客を支援するためには、複雑さや人員を増やすことなくCSチームのパワーを増幅させることが重要です。新しいCSチームに必要なものをいくつかご紹介します。

  • 標準化されたプロセス
  • CSMのオンボーディング
  • コンテンツ作成、データ分析、レポーティング
  • CSテクノロジースタックの管理

カスタマーサクセスマネージャー(CSM)が5人を超えてチームが成長すると、非効率な業務が発生するため、業務の合理化が必要になります。CSM が作成したレポートに対して、データの乱れや不信感を抱いていませんか?システムが統合されていないために、CSMが手作業で処理するプロセスに多くの時間を費やしていませんか?それなら、オンボーディングに目を向けて、定義付けされ、よく精査された業務処理方法を標準化しましょう。

CSMの作業効率化の問題は、CSテクノロジースタックを最適化し、CSMを優先度の高いタスクに従事させ、統合されたシステムでプロセスを定義する時期であることを示しています。CS Ops リーダーは、これらの問題を解決する最適な人材です。CS Opsリーダーのアサインを真剣にご検討ください。

ステップ5:さらなる組織拡大に備える

CS Opsにコミットすることで、大きなボーナスがもたらされます。それは、堅牢で正確なレポーティングと、クライアントの指標を俯瞰できる統合システムの構築です。レポートは信頼を築き、そのデータはチームが効率的に規模を拡大する準備を整えるのに役立ちます。チームは多岐にわたる顧客指標を確認しつつ、カスタマージャーニーにおける適切なタイミングでアクションをとることができるようになります。

CSをスケールさせるためのポイントをいくつかご紹介します。

  • CSチームがあるなら、CSテクノロジースタックが必要です。カスタマーサクセス指標の改善や意思決定に使う正確なレポーティングのためには適切なデータが必要だからです
  • スケーラブルなCSテクノロジースタックは、複数の製品を使用しても、カスタマージャーニーのすべての段階でインサイトを提供する必要があります
  • CSMが顧客との関係構築に集中できるように、業務プロセスはより自動化されるべきです。CS業務のデジタル化(いわゆるデジタルCS)はハイタッチな活動を排除するのではなく、それらを最大限に活用するためにあります
  • CSチームは、テクノロジースタック、さまざまなスキルを持つチームメンバー、他部署やマネジメント層の利害関係者によってサポートされるべきです。成果をモニターするための指標をトレーニングや更新プロセスに組み込んで、チームが継続的に成長するためのガイダンスを作るべきです

終わりに:CS組織の作り方

大企業にとって、いま状況は変わりつつあります。サブスクリプションモデルのようなリカーリング型のビジネスモデルの台頭により、現在では顧客に対する積極的なアプローチが必要となっています。従来の営業やアカウント担当者にそのようなタスクを追加で課すことは現実的ではありません。専任の組織、すなわちカスタマーサクセス組織を新たに設立する大企業が業種を問わず増加しています。そのような企業の方から「どこから始めればいいかわからない」「どうやって進めればいいかわからない」「そもそも、どこを目指せばいいのかわからない」という声がよく聞かれます。CS組織をゼロから作る方法論をこちらのウェビナーにまとめていますので、ご興味のある方は参照してみてください。