2023.02.28
Zoom、Gainsightのカスタマーインサイトで戦略を強化
この記事はTechHQに2部構成で掲載されたものの抄訳です。本文中に掲載されたリンクには英語記事へのリンクも含まれます。
Zoomは2011年に創業しましたが、2019年から21年にかけての新型コロナ感染症の大流行時に、ビジネスとプライベートの両方のコミュニケーションを維持するための使いやすい手段として、対面での接近がとても危険だった期間中に本領を発揮しました。その後、世界中のほとんどの企業でハイブリッドモデルが現実のものとして定着し、コロナ後の職場において身近な存在となりました。しかし、もしあなたが今までそれだけだと思っていたなら、私たちはあなたにお伝えしたいことがあります。Zoomは、コロナ後の世界の幅広いニーズと、ビデオ会議がますますユビキタスになる世界で増大する課題に対応するために、進化と適応を続けています。Zoomの機能をさらに拡大・拡張するために、Gainsightのカスタマーサクセスプラットフォームとの新しいパートナーシップを開始したタイミングで、Zoomのグローバルカスタマーサクセス責任者であるJim Mercer氏にインタビューを行いました。
TechHQ (THQ):
Zoomは、我々がコロナ禍を乗り切った際のキーテクノロジーと思われがちです。カスタマーサクセスプラットフォームは、Zoomに何をさらに提供できるのでしょうか。また、なぜ今それを導入するのでしょうか。
Jim Mercer (JM):
しかし、私たちは常に革新的でありたいと思っていますし、それを猛烈なスピードで実行したいと思っています。それは素晴らしいことですが、今はマクロ経済が厳しい時代なので、イノベーションを起こし、成長しようと思えば逆風と戦わなければならないのです。逆風そのものはどうにもなりませんが、逆風への対応を自分たちでコントロールできる立場にあるのです。
データから生まれるイノベーションの確信
マクロ経済の厳しい時代において、スピード感を持ってイノベーションを起こそうとするならば、確実な情報を得る必要があります。実際、このような時代には、カスタマーインサイトに集中することが不可欠です。Gainsightは、すでに持っているインサイトをさらに強化するための、顕微鏡のようなレンズの役割を果たしています。
私たちの製品群にはすでにかなり堅牢なダッシュボードがありますが、これらのインサイトを関連チームに確実に伝えることは、カスタマージャーニーに沿ってより積極的に行動できるようになるため、今本当に重要なことなのです。従来のカスタマーサクセスツールは、カスタマーサクセス(CS)チーム専用に作られたり、サイロ化されたりしているようですが、顧客と接するすべてのチームに優れたインサイトをどのように広め、普及させるかが課題だと思います。
一般的には、ライセンスの問題があったり、売り手の道具箱に入れる単なるツールの一つになってしまい、その道具箱はすぐに不便なものになってしまうことがあります。Gainsightはそのような問題を解決してくれますし、私たちはプラットフォーム技術に関して常に現状を超越したいと考えています。これは必ずしも私たちにとって新しいことではなく、私がZoomに入社した2015年末には、現在使われているツールを導入していました。Gainsightを使うのは、幅広い顧客層への積極的な働きかけとエンゲージメントをいかに拡大できるかが前提になります。
オーケストレートされたカスタマージャーニー
どうすれば、多くの人に思いやりのある働きかけを続けられるか。私たちは、この問いに答えること、そして製品利用を検討することが、決断の前提でした。そのため、Gainsightの機能であるジャーニーオーケストレーターを導入しました。Gainsightの導入により、あらゆる面で適切なインサイトを得ることができ、お客様との関わり方を導くことができます。また、これらのインサイトをチーム全体で可視化できることも、私たちにとって非常に重要なポイントでした。
THQ:
つまり、今持っているツールが、5~6年前には適切なツールであったというケースですね。そして今、あなたが言うように逆風を乗り切るために、さらに何かをする必要があるのでしょうか?
JM:
ええ、確かに。繰り返しになりますが、カスタマーサクセスはカスタマーサクセスチームだけの仕事ではありません。Zoomでは、全チームがカスタマーサクセスを支持しているのです。
スケールの力
THQ:
なぜGainsightなのでしょう?カスタマーサクセスプラットフォームは数多く存在しますが、その中でGainsightを選んだ理由は何ですか?
JM:
その答えは、大きく分けて3つあります。1つ目は、私たちが独自のプラットフォームを革新し続ける中で、Gainsightのように拡張性が高く、私たちと一緒に革新し続けることができるパートナーが必要だということです。
もうひとつは、先ほど申し上げたデジタルタッチ戦略を強化したいということです。以前のツールは当時としては良いものでしたが、そこにいくつかのギャップがありました。マクロ経済が厳しい時代にデジタルタッチ戦略を強化するには、より優れたカスタマーインサイトが必要で、そうすればより少ない労力でより多くのことができるようになります。ジャーニーオーケストレーターツールは、お客様が何をしているのか、あるいはもっと重要なのは、お客様が何をしていないのかを我々のツールの中で結びつけ、エンゲージメント戦略を適切に調整するのに役立つはずです。これは、私たちの仕事にとって非常に重要なことです。ちなみに、Gainsightは数週間前に導入したばかりですが、ツール間の移行に関しては、これまでで最も簡単かつ迅速なスケジュールで行うことができました。
そして3つ目は、顧客と接するすべての関連チームにおいて、より良いインサイトを得ることです。Gainsightのおかげで、CSチームにサイロ化したインサイトではなく、専門チームの手に新鮮なインサイトを届けることができます。部門横断的なインサイトは当社にとって非常に重要です。
次世代のZoom
THQ:
では、願わくばコロナ終焉後のZoomのカスタマーサクセス戦略はどのようなものなのでしょうか。
5つのフォーカス
JM:
「願わくば」という言葉はありがたいですね。コロナ後の時代がどうなるかはまだわかりませんが、今年以降の戦略に関して言えば、今やっていることの多くは、チームの未来予想図と「もしも」シナリオの実行です。例えば、「もし予算が増えないとしたら」「お客様のニーズを先取りするために、どのような再利用をするか」などです。
私たちのチームが重視していることは5つあります。1つ目は、「お客様の喜びを実現する」ことです。私たちのチームは、Zoomの幸福を届けるメカニズムです。私たちは、より思慮深く、データに基づいた方法で、積極的にお客様をエンゲージすることに注力しています。そして、真に製品利用を促進すること、つまりプラットフォーム全体のROIを向上させることです。というのも、数年前まで私たちはどこにでもあるようなビデオ会議ツールでしたが、今ではビデオ会議にはさまざまなオプションがあリます。そのため、製品利用の促進は難易度が上がっています。Zoomはもう単機能製品ではありません。だから、それを明確にし、お客 様にビジョンを伝えることが非常に重要なのです。
もうひとつは、ロイヤリティとアドボカシーで、お客様のロイヤリティとコミュニティを通じて成長を促進するプログラムを推進する方法論を確立することです。なぜなら、私たちが可能だと考えていることの範囲外であっても、お客様は実現のために最善を尽くしていることが多いからです。
3つ目は、もし私が好きな部分があるとすれば、それは基盤の保護と成長です(ただし、ここでは好き嫌いの判断はしないことにしています)。これが、私たちのライフタイムバリューの要となる部分です。ライフタイムバリューを考えるとき、私たちの目指す道は、お客様とその成果です。基盤を守り、成長させるということは、私たちがすべてを創り出すのに役立った構成要素を大切にすることです。つまり、私たちが構築している成果、目標、KPIは、すべてこの戦略のもとに構築されているのです。
このように考えることで、アップセルの機会をより迅速に特定し、顧客基盤のリスクを軽減することができます。これは必須事項で、カスタマーサクセスの入門編です。また、製品利用に関する先行指標はたくさんありますが、時間が経つにつれて、それらは遅行指標になっていきます。使用率の変曲点に気づいても、手遅れになることがよくあるのです。非常に競争の激しい環境なので、手遅れになることは許されないのです。
Gainsightとそのツールは、指標を発見して効果的に対応し、より体系的に顧客基盤を維持・拡大するために、迅速に顧客インサイトを提供してくれます。
文化と思いやり
THQ:
そして、最後の2つの注力分野は?
JM:
4つ目はオペレーショナルエクセレンスです。機敏なオペレーションチームなくして、CSチームの成功はあり得ません。そこで、システム、データ、イネーブルメントの各チームについて考えてみましょう。先ほど、社内の人材育成についてお話しましたが、その過程で、私たちの持つ才能をスケールさせることで、これらのことが可能になるのです。また、NPI(新製品導入)は、お客様だけでなく、社員にとっても、特に社員の定着や社員の幸福を考えると、非常に重要です。つまり、従業員のスキルアップを確実に行うことです。結局のところ、Zoomは、製品の観点から見ると、2、3年前とはかなり異なる状況になっているのです。
5つ目の柱は、文化と思いやりです。これは他の多くの企業とあまり変わりませんが、本当に基礎となる構成要素は、目的を持って意図的に時間、努力、エネルギーを従業員に投資することによって、お互いを思いやることです。ワークライフバランスの活動は、単に口で言うだけでなく、リーダーとして模範を示すことが必要です。また、時間を取ることに関して説明責任を果たすようなプログラムを導入することです。また、キャリアパスの開発やチームビルディングも必要です。これは、ここ数年のZoomのような急成長中の組織では、しばしば見失われがちなことです。
THQ:
ワークライフバランスのケアや文化的側面全体に投資している企業は、そうでない企業よりも前進が速いようです。
JM:
特に、多くの人が自宅でリモートワークをしている以上、これは非常に重要なことです。もはや仕事と家庭の区別はありませんから、たとえ仕事と家庭の厳密な「場所」が同じであっても、その区別を明確化できるどうかは私たち次第なのです。そして、これはZoomにとって、単にこれを可能にする製品を持つだけでなく、実際にこれをより良くする機会でもあります。
私たちは、このような有意義な体験を推進する必要があります。また、このような体験を推進しない場合、家庭と仕事の境界線がそれほど曖昧にならないように、これらのことを確実に推進し、本当に時間を取って一歩踏み出して歩んでいかなければなりません。というのも、一歩踏み出すのは本当に難しく、燃え尽き症候群のような状態に陥る可能性があるからです。だから、どんな環境でもワークスペースに関 するベストプラクティスと普遍的な真理を導き出すことが本当に重要なのです。
プラットフォーム化するZoomと顧客インサイトの重要性
THQ:
最近、2023年のオフィス文化について、9時-5時という時間帯がなくなり、ハイブリッドワークが主流になるという話を聞きました。その元祖として、Zoomがワークライフバランスの確立に熱心なのは理にかなっていると思います。
JM:
私たちは、このことをもっとうまく啓蒙する必要があります。しかし、先ほども申し上げたように、Zoomはもはや初期のコロナ禍の課題を解消するための単なるビデオ会議システムではないのです。このユニークな環境は、企業や消費者のために作られたものなのです。ほとんどのテクノロジー企業では矛盾しているようなことですが、Zoomではスケールという実に興味深い二項対立の中にいます。私自身、Zoomに長く在籍している動機のひとつは、自分たちの力ではどうにもならないような困難があるにもかかわらず、いかに早くイノベーションを起こし続けられるかということにあります。
THQ:
マクロ経済の逆風が吹いているようですが。
JM:
そうです。それにもかかわらず、昨年1年間で、1,500以上の機能追加とプラットフォームの強化を行いました。1日の終わりに、先ほどお話したNPIについて考えてみてください。社内のチームに装備させ、リリースする新製品に関連するデータ・インサイトをできるだけリアルタイムに近い形で提供することが重要なのです。そうでない世界は想像もつきません。
THQ:
1,500? 1年で?
JM:
そうですね。Zoom MailとCalendar、Zoom Spots、Zoom Phone、そしてZoom IQなど、ほんの一握りですが発表しています。これらはすべて、Zoomのプラットフォーム上に構築されています。Zoom Roomsは、特に企業のお客様にとって、予約の強化や従来の会議室の活用、Zoom Roomソフトウェアの活用以外でも、直接的なビジネスで最も注目されています。今年は、Zoom Virtual Agentの発表に加え、コンタクトセンター・プラットフォームもリリースしています。私たちは、AIチャットボットを取得し、人間が関与することなく、顧客のリクエストの50%を解決するのに役立っています。さらに、Zoomのイベントやウェビナーを開催し、リモートイベントやハイブリッドイベントのROIを高めています。
このようなことを考えると、私たちには、大規模で、お客様のニーズを事前に把握し、それに応えることができる堅牢なプラットフォームとGainsightのようなパートナーが必要です。Zoomはコロナの拡大とともに、リモートワークやビデオ会議の代名詞のような存在になりました。厳しい経済状況にもかかわらず、猛烈なスピードで革新を続けていることは、私にとって非常にポジティブなことです。また、お客様との積極的なエンゲージメントを実現するために、Gainsightのようなパートナーやツールが必要なのです。
THQ:
これはもう、あなたのおばあちゃんのZoomではありません。
JM:
そして、より優れた顧客インサイトが道しるべとなり、発展し続けることでしょう。