2023.10.06
CSリーダーに着任したら検討すべき4つのポイント
多くのカスタマーサクセス(CS)プロフェッショナルにとって、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)からチームリーダー、CS責任者、そして最終的にはCCO(最高顧客責任者)へと、明確なキャリアパスがあります。どの企業でカスタマーサクセスのキャリアをスタートさせたかに関わらず、初めてCSチームを指揮するときが来ると、取り組むべきことの多さに気が遠くなります。どうすれば迅速にインパクトを与えられるのでしょうか?学んだCSのベストプラクティスを、顧客が実際の成果(アウトカム)を生み出すために、自分たちはどのように反映させればいいのでしょうか?
Gainsightが主催するウェビナーに登壇してくれたAllboundのグローバルカスタマーエクスペリエンス担当副社長であるGenesis Lee氏が、CSリーダーが着任してからの数週間から数ヶ月における優先すべきアクションに関するヒントを次のように共有してくれました。1つずつ順を追って見ていきましょう。
ヒント1:理想的なカスタマーエクスペリエンスを反映するCSチーム体制を確立する
ゼロからチームを作るのでない限り、新しいカスタマーサクセスのリーダーは既存のチームと部門構造を引き継ぐことになります。Allboundの場合、Genesisは4人のCSMと1人のチームリーダーからなるチームに入りました。ありがちなことですが、CSMはオンボーディング、トレーニング、継続的な顧客管理、アップセル、契約更新など、多くの役割を担っていました。このようなアプローチでは、CSMが受動的なトラブルシューティング活動を優先せざるを得なかったため、収益の伸びを阻害していました。
組織構造とアプローチを改善するために、Allboundチームはまず、自分たちが作りたい理想的な顧客体験に焦点を当てました。カスタマーエクスペリエンス(CX)焦点を当てて分析することで、より効果的な組織構造が明らかになりました:
- 専任のインプリリソースは、セールスからCSへのスムーズなハンドオフをサポートすることに集中しました。彼らのリソースは、TTV(Time-to-Value)を迅速化し、長期的な成功のための強固な基盤を確立するために、オンボーディングとトレーニングプロセスのプロジェクト管理に集中的に投下されました
- テクニカルサポートチームが設立され、最初の12週間で人員を3人増やしました。これは、CSMからトラブルシューティングのような受動的なタスクを取り除くことに成功しました。その結果、顧客はよりタイムリーに問題を解決できるようになりました
- CSMチームはカスタマーアドボケイト(支援者)にシフトしました。CSMチームは、自分たちが培ったSaaSとパートナープログラムの専門知識を活用し、プラットフォームの最適化について顧客により良いアドバイスを提供できるようになりました。この信頼と戦略的関係により、CSMは直感的に収益を拡大する機会を見つけ、契約更新を容易にすることができるようになりました
これはすべての企業に当てはまるモデルではないかもしれませんが、CXに沿った役割を明確にすることで、AllboundのCSチームはリソースを必要な分野に集中することができ、最終的にはCXの向上につながりました。
ヒント2:部門横断的なKPIに合わせることで、CSに対する全社的な賛同を得る
カスタマーサクセスは企業の成長という点で大きな可能性を秘めているにもかかわらず、一部の企業はCSをコストセンターと見なし続けています。その結果、CSに対する全社的な賛同と支持を得ることが困難になることがあります。新しいCSリーダーにとっての重要な目標は、いかに早く努力の成果を示し、投資対効果を正当化できるかを見極めることです。
ここでの重要なヒントは、CSリーダーが各部門の責任者と協力して、他の部門のリーダーにとって重要な指標やKPIを導き出すことです。その後、CSチームは、それらの同じ指標に合わせるか、またはCSの短期的・長期的な取り組みの指針となる相関KPIを独自に設定することができるようになります。
多くの場合、この設定プロセスは、CSが他部門の負担を軽減するタスクを特定するのに役立ちます。例えば、プロダクトチームのリソースを消費するサポートチケットの削減や、営業組織のToDoリストから除外される契約更新作業などです。
CSチームが他部門のKPIをサポートするだけでなく、他部門の効率化も支援することで、他部門のCSに対する見方が変わることは間違いありません。しかし、これらの目標がいつ、どのように達成されるのか、他部門の期待値を管理することも重要です。一朝一夕には実現しないため、時間の経過とともにどのように成果が現れるのか、明確なマイルストーンを設定することが重要です。
ヒント3:創造的な報酬でCSMの業績を動機付ける
会社全体からリスペクトされる優れたチームを作るには大きな努力が必要です。勢いを生み出し、適切な役割を担う人材を確保したら、そのメンバーを維持することも同様に重要です。CSMが一日の大半を消火活動に費やしている場合、多くのチームにとってCSMの燃え尽き(バーンアウト)が問題となる可能性があります。
Allboundでは、CSMの報酬に工夫を凝らすことで、CSM個人のモチベーションを高めるだけでなく、部門内のチームワークの醸成にも役立ちました。主な変動報酬はグループのネットリテンション数に基づいています。このグループ目標を達成すると、各CSMのグロスリテンション数に基づいて個人報酬が計算されます。グループ目標はチームワークを強調し、チームメンバーが互いにサポートし合うことを熱望する結果を導き出しました。
グループのKPIに加えて、チームメンバーは個人の達成に対するインセンティブも求めました。AllboundのCSMの変動報酬のもう一つのレイヤーは、達成時にアクセラレーターを含むエクスパンション収益目標に基づいています。このアプローチにより、同社は獲得したカスタマーサクセスクオリファイドリード(CSQL)を通じてエクスパンション収益を倍増させることができました。
Allboundはまた、年間を通じて組織のビジネス戦略に沿ったアクティビティベースの報奨金も提供しています。例えば、ある四半期にQBRの実施率を向上させたいと考え、その取り組みに焦点を当てた報酬が設定されました。
チーム編成と同じように、CSチームの報酬も、作りたい顧客体験を考えれば明確になります。チームがカスタマージャーニーを顧客の成果に向けて維持できるような活動にインセンティブを与えれば、誰にとってもWin-Winになるのです。
ヒント4:効率化のための土台作り
高成長ビジネスでは、会社の成長目標をサポートするために必要なリソースを前もって見通しておくことが重要です。そうすることで、コストを拡大することなく、成長に合わせて拡張できるキャパシティプランを描くことができます。CSMのキャパシティを拡大するためには、CSMの1日の活動の中で何が障害となり、時間を浪費しているかを知ることが不可欠です。CSチームメンバーとシャドウィングを行うことは、このインサイトを収集する素晴らしい方法です。チームメンバーと一緒に一日を過ごすことで、リソースを最適化するための明確な領域を特定することができるからです。
Allboundではこのアプローチによって、CSチームが契約更新とアップセルのための提案をより効率的に構築する方法を必要としていることが明らかになりました。また、CSMは、顧客のヘルススコアを算出するための手作業のプロセスをサポートするために、プロダクトの使用状況の調査にあまりにも多くの時間を費やしていることも確認されました。さらに、各CSMがビジネスレビューの準備に何時間も費やさなければならない状況であることも洗い出されました。
このような非効率性の課題一つひとつに、新たなプロセス、デジタルカスタマーサクセスの戦術、Gainsightをはじめとするツールによる自動化で対処し、CSチーム全体のキャパシティを飛躍的に拡大しました。また、新規セールスの傾向を把握することで、会社の成長目標に合わせた3年間の採用計画を立てることができました。
これらのヒントはそれぞれ、新しく立ち上がるCSチームにおいて優先順位をつけるべき重要なものですが、すべてのCSリーダーに捧げる最も重要なアドバイスは、提供したい体験から始めて、それを提供するための能力をチームに生み出すことだとGenesisは強調しました。