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カスタマーサクセスで設定するべき8つのKPI
概要と計算方法も解説

近年では、顧客のサポートだけでなく顧客を成功に導くことを目的とする「カスタマーサクセス」という職種が注目されています。カスタマーサクセスではその名の通り「顧客を成功に導くこと」が目的であるため、カスタマーサクセスの効果を測るためには、正しくKPI・KGIを設定する必要があります。
本記事ではカスタマーサクセスの概要に加え、KPIとなる項目や計算方法・達成のポイントを解説します。

目次

  • カスタマーサクセスとは
  • カスタマーサクセスにおけるKPIとは
  • カスタマーサクセス業務で見るべき8つのKPI
  • カスタマーサクセスのKPIを達成させるためにすべき3つのこと
  • まとめ

カスタマーサクセスとは

顧客を取り巻く環境やビジネスモデルが変化している中、顧客が求めるものも変わってきています。その中で、お客様がより長い期間製品・サービスを使ってくれるためには、お客様が製品の「価値」をどれだけ感じてくれているかが、今まで以上に重要になってきています。それを実現するためにカスタマーサクセスが必要になってきました。

カスタマーサクセスの概要

カスタマーサクセスは言葉のとおり、製品やサービスを通じて顧客の成功を支援することです。
顧客の更新をする支援することから始め、顧客が製品やサービスを活用して成果を出し、顧客と一緒にビジネス成長をしていく活動を支援します。それが結果として解約率の低減に繋がり、お客様のビジネス成長と合わせて自社のビジネス成長に繋げることができます。新規ビジネス獲得と合わせて、既存顧客からの継続的な売上及び拡大が自社のビジネス成長においても欠かせないピースとなっています。

カスタマーサクセスの必要性

カスタマーサクセスが重視され始めたのは2000年頃からといわれており、その背景には「サブスクリプションサービスの増加」の影響が大きいと考えられています。
サービスに利用料を支払うという都度課金型のビジネスモデルが一般化したことで、顧客の購買行動が「必要なときに、必要なだけ使う」スタイルへと変化しました。
そのため、「契約をして終わり」ではなく、「サービスを継続して契約し続けてもらう」ための顧客支援の視点を持つことが必要となりました。

カスタマーサクセスにおけるKPIとは

カスタマーサクセスを機能させるためには、KPI指標を意識することが欠かせません。ここでは、カスタマーサクセスにおけるKPI指標について解説します。

KPIに対する考え方

カスタマーサクセスの目標は顧客の成功を実現することです。それらを経営視点から見ると、NRR、MRRなどの利益に繋がる数値を向上するための取り組みが必要です。
カスタマーサクセスにおいては、NRRやMRRをKGIとして設定し、そこからKPIを設定していくとよいでしょう。

成果指標

KPI指標を設定する際は、まず成果指標を設定しましょう。経営層の方が見る、さまざまな活動の結果として現れる数値が成果指標です。

カスタマーサクセスにおいての代表的な成果指標:
・売上
・解約率
・NRR

カスタマーサクセスの施策の効果測定や改善に役立つ指標です。

先行指標

何がこの成果指標に起因・貢献するのか?ここを知って追うことが必要です。そのためには先行指標を定めるとよいでしょう。先行指標は取り組みの最中に計測可能で、リアルタイムでの改善に役立つ指標です。

カスタマーサクセスにおいて代表的な先行指標:
・ヘルススコア
・利用率
・NPS

適切に分析できれば有用な指標ですが、ヘルススコアを筆頭に一般化が難しいものが多く定義が難しいという点には注意が必要です。

カスタマーサクセスの活動

さらにそれをたどると、その大元にはこれらの数字をあげるためのアクションが必要です。そのため、カスタマーサクセスの活動も定義していきましょう。各CSMがこれらアクションをしていることで、先行指標が良い状態を作り、結果としての成果指標につながるというわけです。

カスタマーサクセスにおいて代表的なの活動:
・お客様との定例ミーティング
・ビジネスレビューの開催

どのようなカスタマーサクセスの活動が先行指標に貢献できるのかを考え、それを実行してもらうことの大切さを各カスタマーサクセスマネージャーが理解するかが大切です。

カスタマーサクセス業務で見るべき8つ項目のKPI

カスタマーサクセスで見るべき指標はさまざまありますが、ここでは代表的な4つの成果指標と4つの先行指標をご紹介させていただきます。

1. 指標 – NRR・NDR

NRR 、NDRは既存顧客の売上を前年比で維持できているかを計る指標です。
数値が100%を上回っていれば、アップセルやクロスセルなどの効果により、売上が向上していることを表します。

売上継続率(NRR)の計算式:
NRR = (月初のMRR + Expansion MRR) -(Downgrade MRR – Churn MRR)÷月初の合計MRR

2. 成果指標 – チャーンレート

チャーンレート(解約率)は一定期間内における自社のサービスの利用を辞めてしまった人の割合を示すため、数ある指標のなかでも顧客満足度をダイレクトに示す指標とされています。
チャーンレートが悪化に比例して売上高や収益も減少するため、常に状況をモニタリングして製品やサービスの改善を繰り返す必要があるでしょう。

解約率(チャーンレート)を導く計算式:
・カスタマーチャーン=解約数÷契約顧客数
・レベニューチャーン=(サービス単価 × 解約数)÷ 売上

3. 成果指標 – 拡大率(アップセル・クロスセル率)

提供しているサービス・商品に複数のプランがある場合は、アップセル率やクロスセル率をKPIと設定するとよいでしょう。
アップセルとは、現在購入している商品やサービスよりも上位モデルの商品を購入するように提案する営業手法です。それに対してクロスセルとは、現在購入している商品と合わせて関連商品・サービスも提案する「セット販売」を促す営業手法を指します。
SaaSをはじめとするサブスクリプション型のビジネスモデルは、既存顧客の継続利用率が利益の拡大や事業の成長に繋がります。カスタマーサクセスの一環として、アップセル・クロスセル率は検討に入れるとよいでしょう。

4. 成果指標 – リテンションコスト

リテンションコストとは、顧客一人当たりの年間リテンションに費やした金額です。
人件費、ツールの費用、オンボーディングやトレーニング等にかかる費用などを元に計算されます。
この指標は、1年間に保持された顧客の総数で計算すると最も正確になります。結果はさまざまですが、一般的には、この数値は時間とともに減少していくのが望ましいでしょう。
注意すべきは、有効顧客数を入力する際に、当年に追加された顧客は含めないことです。

リテンションコストの計算式:
(CSMのコスト+ツールのコスト+オンボーディングチームのコスト+カスタマーマーケティングチームのコスト+CSメンバーのトレーニングコスト)÷ 総顧客数

5. 先行指標 – NPS

NPSとはサービスや商品、また開発した企業に対する顧客の信頼度や愛着度を示す「顧客ロイヤリティ」指標です。先行指標の一つとして考えられると良いと思います。
顧客ロイヤリティを向上させることで自社のファンを増やし、顧客自らSNSなどで自社や商品を拡散してもらうことも期待できます。

  • 「批判者」(6~0 点):自社の否定的な口コミを広げる
  • 「中立者」(8~7 点):他に魅力的な商品があれば乗り換える
  • 「推奨者」(10~9 点):サービスに満足している人

6. 先行指標 – オンボーディング完了率

オンボーディング完了とは、顧客が商品やサービスの利用方法を理解し、定着するまでの状態を意味します。
長期間オンボーディングが完了していない顧客は解約リスクが高くなるため、KPIとして設定すると良いでしょう。

オンボーディング完了率の計算方法:
オンボーディング完了率 = オンボーディングが完了した企業数 ÷ オンボーディング期間の全企業数

7. 先行指標 – アクティブユーザー数

アクティブユーザー数とは、「活動的な利用者」のことを指す指標です。企業によって差はありますが、多くは自社内で決めた期間内に1回以上利用した利用者をアクティブユーザーと呼びます。一方で一定期間内における商品・サービスの利用が見られない利用者は、非アクティブユーザーとなります。

8. 先行指標 – 顧客エンゲージメント

顧客エンゲージメントとは顧客との接点をどれだけ持っているかを測る指標です。
ご契約いただいている製品やサービスを活用及び更新してもらうにあたって、必ず関係を持つべき役割の人との接点です。それは一人とは限りません。
例えば、ユーザーがイベントに参加しているかであったり、エグゼクティブとは半年に一度以上お会いしているか。などをスコアに反映します。

カスタマーサクセスのKPIを達成させるためにすべき3つのこと

カスタマーサクセスを成立させるために設定したKPI指標を達成するためには、それに応じた施策が必要です。ここでは、カスタマーサクセスのKPIを達成させるためにすべき施策を解説します。

1. 先行指標やカスタマーサクセスの活動を定期的に見直す

先行指標とカスタマーサクセスの活動が成果指標として設定しているKPIにどのように影響しているかを確認することが大切です。
先行指標が良好でも結果指標が低下している場合、先行指標として定めている項目に見落としがある可能性があります。もしくはCSMが実施しているアクションが成果指標や先行指標と連動していない場合には、アクションを見直す必要があります。
これらを繰り返すことで、成果指標を健全に保つための先行指標とカスタマーサクセスの活動を設定することが可能となります。

2. 顧客ニーズを部門間で連携する

解約率の改善や売上継続率の向上などは、カスタマーサクセス部門内のみで対応できるものではありません。お客様がどのような成果を求めて製品・サービスを契約しているのか。その成果のために更に必要なことは何か。これをお客様からお聞きし、製品開発に伝えることでより良い、より価値を提供できる製品・サービスを作ることができます。よりお客様の成果に寄り添った製品開発をすることでチャーンを防ぐだけではなく、新しいお客様を獲得することができます。
どのようなお客様がビジネス拡大するかということを把握し、営業に戻す。営業としてはより成果の出やすいお客様がわかり、成果を導く方法をお客様に提案ができるようになるので、「チャーンしないお客様」へ製品・サービスを販売できます。結果として既存ARR(年間契約金額)の維持、既存顧客でのビジネス拡大、そして新規顧客の獲得ができることになります。
会社全体としてカスタマーサクセスを実行することにより、持続的なビジネス成長をすることができるため、部門間での連携を密にして取り組むことが必要です。

3. 積極的にデータを活用する

カスタマーサクセスのKPIを達成するためには、顧客へのアクション履歴や顧客の問い合わせ履歴などを蓄積していけるデータの活用は欠かせません。
業態によって必要なデータは異なるため、自社の状況に適したデータを積極的に活用するようにしましょう。

カスタマーサクセスで活用できるデータソース:
・SFA(営業支援システム)
・CRM(顧客管理システム)
・問い合わせ管理システム
・LTV管理ツール
・オンボーディング管理ツール
・NPS計測ツール

まとめ

サブスクリプション型のビジネスが急増している昨今、営業の手法も大きく変わっています。従来の営業手法のみで売り上げの向上が見られない場合、既存顧客からのビジネス成長を支援するカスタマーサクセス部門の設置は大きなメリットを生むでしょう。契約の継続がゴールであるカスタマーサクセス部門のKPIとしては成果指標だけではなく、先行指標、カスタマーサクセスの活動を確認することで、中長期的なビジネスの健全性を保つことが可能です。
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和久井 かおり/Gainsight 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター
和久井 かおり/Gainsight 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター

慶應義塾大学卒業後、大手ハードウェア企業のエンタープライズ営業として新規と既存営業の業務を経験。その後スタートアップ企業にて様々なロールを経験する中でカスタマーサクセスというコンセプトに出会い、惚れ込む。2015年からはアドビにてカスタマーサクセスに従事。担当カスタマーサクセスマネージャー、カスタマーサクセス部門のマネージャー、シニアマネージャーを経て、カスタマーサクセスの実行とそれを実現するために必要な要素/組織について学ぶ。2022年にGainsight Japanに入社し、カスタマーサクセスチームを牽引。