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プール型カスタマーサクセスマネジメントとは?

プール型CSMモデルの誕生

この10年近く、カスタマーサクセス(CS)はカスタマーサクセスマネージャー(CSM)と顧客との1対1の関係を通じて体系化されてきました。そしてCSの普及に伴い、1つ問題が浮かんできました。このアプローチは、事業の拡大と顧客の増加に合わせて、CS組織の規模も拡大する必要があるという点です。

この市場で永続的なビジネスを構築するために、企業は事業の成長と正比例にCSMの人員を増加させ続けることはできません。そのため、あらゆる規模の組織がCSチームを変革し、ハイタッチCSモデルをデジタルCS戦略で置き換えたり、補完することで、少ないCSMの人数でもより多くのことをこなせるようにしています。

CSチームを効率的に拡張するための主要なデジタルCSの方策は、プール型CSMモデルの採用です。プール型CSMモデルは、CSMをCSMチーム内の「プール」にグループ化するモデルです。各チームメンバーがそれぞれ担当する顧客のポートフォリオを持つ代わりに、複数のCSMが共同で多数のアカウントを担当します。つまり、従来型の1対1のモデルに対して、CSMと顧客の割合が多対多のモデルになります。

このモデルでは、対象アカウントには専任のCSMは存在せず、CSMは各自のリソースを蓄えて共有(プール)する形態をとります。採用する企業は限られたリソースの中で事業の成長に合わせてCSの担当範囲を拡張することができます。

プール型CSMモデルのタイプ

プール型CSMモデルには以下の2つのモデルがあります。

  • 戦略型CSM とプール型CSM
  • センター・オブ・エクセレンス(CoE)としてのプール型CSM

それでは、それぞれのアプローチを実例を交えながら見ていきましょう。

1. 戦略型CSM vs. プール型CSM

プール型CSMモデルの第一のアプローチは、CSチームを2つのグループに分けることです。戦略型CSMは、ARR の高いアカウントに対して 1 対 1 で対応する、ハイタッチモデルです。プール型CSM は、それ以外のアカウントに対応します。この戦略型CSMとプール型CSMを併用するアプローチは、最重要顧客に専属のCSMを確保したい企業にハイブリッドなオプションを提供します。

このハイブリッドなアプローチには、すべての関係者にとっていくつかのメリットがあります。高ARRのアカウントにハイタッチCSMを提供するためのリソースがある企業は、高ARRのアカウ ントにハイタッチCSMを提供することができ、低ARRのアカウントにはCSMプールで効率的にビジネスを拡大することができます。また、このモデルはCSMにキャリアアップのパスを提供します。CSMはプール型からキャリアをスタートし、スキルを向上させた後、戦略型CSMの役割を担うことができます。

Gainsightの顧客であるImprivata社(英語事例)は、このプール型CSMモデルを活用しました。Imprivata社は、ヘルスケアという顧客接点の多い業種で事業を展開しており、人員を大幅に増やすことなくCSチームを拡大する必要がありました。その解決策は チームを戦略型CSMとプール型CSMに分けることでした。

「私たちは、CSMが顧客にとって真の戦略的パートナーとなるための適切なアカウント比率を評価することから始めました。その結果、戦略的アカウントの比率を半分に減らし、すべてのCSMの時間の一部をCSスケールプログラム対象のアカウントをサポートするために確保しました。このアプローチにより、CSチーム全体がスケールプログラムを通じて大規模に提供される顧客エクスペリエンスに対するオーナーシップを感じ、自分ゴト化してくれるようになりました。また、CSチームは、当社のソリューションが顧客のニーズに対応できる、確立されたベストプラクティスであると考えるようになりました。」と、Imprivataのカスタマーサクセス担当バイスプレジデントであるChristy Murfitt氏は述べています。

2. センター・オブ・エクセレンスとしてのプール型CSM

プール型CSMのもう1つのアプローチは、センター・オブ・エクセレンス(専門家)モデルです。これは、CSMのプールを顧客セグメント、プロダクトライン、地域などのカテゴリー別に分け、各プールを担当するCSMがそのカテゴリーのエキスパートになるというものです。例えば、ヘルスケアで一つのプールを作るなど業種による顧客セグメントで分類し、そのプールを担当するCSMはヘルスケアに関係する業務知識の専門性を発揮する、といった形です。

多くの場合、顧客の各グループは同じような目標、課題、リソースを抱えています。そのため、プールの専門家であるCSMは、各セグメントに共通する要素を踏まえながら戦略を策定することができ、より多くの顧客に適用できる施策を打つことができるようになります。例えば、プール型CSMは、セグメントや専門分野に関連する一般的な質問やエンゲージメントに使用するテンプレートメールを作成することができます。

ブラジルのプラットフォーム提供企業であるRD Station(英語ポッドキャスト)は、このプールCSMモデルを活用した企業の一つです。「私たちのCSチームの組織構造では、個々のCSMは異なるトピックの専門家になることに集中し、アカウント全体にそれらの学びを適用します」と、RD Stationの収益、販売、およびカスタマーサクセス担当副社長であるErika Tornice氏は言います。「そして今日、チームがCS支出を最適化できるよう、顧客をセグメント化しています。最も関係が複雑な顧客(当社顧客ベースの約30%)には、専任のCSMを配置しています。残りの70%はプール型CSMモデルです。

プール型CSMモデルとCSPテクノロジーの必要性

プール型CSMモデルを成功させるには、自動化されたワークフローを活用し、CSMチームと顧客の両方にシームレスで標準化された業務体験を提供するカスタマーサクセスプラットフォーム(CSP)の導入が効果的です。その結果、プールされたCSMチームは、カスタマージャーニーに沿ったあらゆるタッチポイントを運用できるようになり、顧客にとっての価値や、リニューアルやエクスパンションによる収益機会を逃すことがなくなります。うまくいけば、顧客にとってシームレスで一貫性のある体験も維持できます。

CSPのようなテクノロジーを導入することで、デジタルCS戦略の要であるすべての顧客データの信頼できる唯一の情報源(シングル・ソース・オブ・トゥルース)を提供できます。つまり、顧客のヘルススコアのデータ、プロダクトの使用状況データなどをすべて一箇所で把握できます。これは、プール型モデルの下でCSMが連携して作業するための重要なリソースになります。

CSMが単一のプラットフォーム上ですべての顧客接点、今後のリニューアル、エクスパンションの機会を可視化できるようになれば、CSMの業務効率はさらに高まります。テクノロジーを活用することで、CSMは解約を防ぐために常に消火活動を行うというリアクティブなスタンスではなく、顧客の成果を促進するためにプロアクティブなスタンスを取ることができるようになります。

プール型CSMモデルを実現するCSPテクノロジーに興味のある方はこちらを参照ください。