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カスタマーサクセスにおけるAI活用に向けたデータTips

AIの進化と適用

AIの進化は目覚ましく、Siri、Googleアシスタント、Alexaなどのアシスタンス、Spotify、Apple Music、Netflix等ストリーミングアプリなど生活の中にも広がりつつある事は皆さんも認識の通りかと思います。

特に自然言語処理の分野では、対話システムの質が大幅に向上し、より人間らしい会話が可能になっています。2024年5月13日のGPT-4oの発表では映像や音声までも分析の対象となりました(デモをご覧になっていない方は視聴をおすすめします)。

生成AIを組み込んだ業務アプリも、会議録音からの文字起こし、契約文書のレビュー、履歴書のスクリーニング等、多数登場してきています。米国のSaaS企業ではもはやAIは有償の付加サービスではなく、標準機能として組み込まれるべきという議論もあるほど、活用は不可避の状況のようです。

AIがカスタマーサクセスにもたらす影響

そのような技術革新の中、AIはカスタマーサクセスにはどのような影響をもたらすのでしょうか。

カスタマーサクセス世界最大のコミュニティ、Pulse 2024では、カスタマーサクセスにおけるAIを、CSMの人間らしい活動を後押しするための技術として「Human First AI」と名付け、ユースケースとともに解説されました。その概要は以下の通り(抜粋)です。

①盲点を減らし、気づきを前倒しする

顧客のNPSや利用状況の変化に気づいてから解約防止のアクションをとってもすでに手遅れ、ということもある。より早い段階で、ミーティング中の苛立ち、言葉遣い、トーン、姿勢、メールの返信の遅れ、などからリスクを捉えられれば、顕在化する前に対策が打てるようになる。

②つらい作業を軽減し付加価値の高い活動へシフトする

CSMが多くの時間を費やし苦痛と感じることの多い、ミーティングの準備、ミーティングのフォローアップ、あらゆる入力作業、問い合わせ対応といった業務の負荷を大幅に軽減し、より付加価値の高い活動に集中できるようになる。

③知見が瞬時に共有され、チーム全員がエースになる

新人のCSMでさえも、生成AIによりエース級のCSMになりうる。例えば特定の業界のユースケースをお客様から聞かれた時、これまでの様に持ち帰りSlack上で仲間の回答を待ち続ける必要はなく、その場で即座に回答ができるようになる。

Gainsightが提供するAI機能含め、Pulse 2024の詳細はこちらのWebセミナーで解説されます。ぜひご参加ください。また、Pulse 2024のセッションを無償で視聴できるPulse Libraryも公開されています。AI関連のセッションも多数ありますのでご参照ください。

高まるデータ整備の重要性

さてPulse 2024のHuman First AIの発表を聞いて多くの人が口にしたのは「データが全て」ということ。

複数システムやエクセル、スプレッドシートでバラバラとデータが分散したままではこの恩恵にあずかることは難しくなります。

ChatGPTの活用経験者であればご存知の通り、質問の意図や回答のトーン、回答の字数などを補足して「うまく」質問できるかがアウトプットの質を左右します。同様に対象となるデータも、AIがアクセスして処理する効果が最大化するよう、戦略的に整備する必要があります。

例えるなら、お掃除ロボットの成果を最大化するために床を事前に片付けておくイメージでしょうか?

では、どのような考慮をしてAI活用のためのデータを整備すべきでしょう。

AIの活用成果を最大化するためのデータTips

構造化データだけでなく、非構造化データも統合する

生成AIは表形式の構造化されたデータに加え、テキストなどの非構造化データの解析も得意としています。前述の通りGPT-4oからは文字のみならず映像や音声までもが対象となっていますね。つまりCRM等のリレーショナルDBのデータや、製品の利用データだけでなく、メール、ミーティングなどの会話情報、サーベイ回答に含まれるテキスト情報、オンライン行動データなど、あらゆるデータを取り込みインサイトの対象とすべきです。

サマらずに、全部入れる

データベースの容量制限などからローデータではなくサマリー情報を作って入れることが一般的に推奨されていたこともありましたが、そこで情報量が犠牲となり気づきが遅れることも考えられます。AI活用の観点においては、極力事前の集計や間引きなどせずに取り込むことが推奨されます。

しかるべき紐付けはしておく

データを無秩序に入れただけだと、主語や述語が欠けた文のように誤った認識を生むリスクがあります。

特にB2Bの事業では、少なくとも企業、できれば担当者、契約などとも紐付けてデータを取り込みましょう。

今はまだAIを活用する段階ではない場合でも、将来の活用を見越してシステム改修時などは上記を意識しておくことを推奨します。

Gainsightのデータ整備支援機能

重要性の高まっているデータ連携・整備に関して、Gainsightが提供する支援機能の特長を簡単にご紹介します。

大容量・高速処理データ基盤

カスタマーサクセスはあらゆる情報を考慮した活動が求められるため、Gainsightには(追加料金などなく)億を超える件数のデータを蓄えられ、さらに高速で処理できる基盤を提供しています。

様々な種類のデータを取り込むコネクタ群やAPI、処理エンジン

CRM、サポートシステムやデータレイクのような構造化データのみならず、Outlook、Gmail、Zoom、Gong、SurveyMonkey、Slack、Teamsなどの非構造化データ、会話データともコネクタを提供しています。

また、データを入れるだけではなく、CSMが適切なアクションを取りやすいようにデータの集計や加工をしてヘルススコアをつけたり、アラート・アクションの発行を設定することができます。

データ処理の設定は、ノーコードで直感的なUIにより、ITチームに依存することなくCS Ops/CSMの方にクイックにメンテナンスすることができるので、短いサイクルでのPDCAが可能です。

時系列で非構造化データを管理する仕組み「タイムライン」

カスタマーサクセスの業務は、今現在のお客様の状況だけでなく流れを捉えることが重要ですので、時系列でお客様との合意事項、会話履歴、利用状況やスコアの変化を記録しておく「タイムライン」を提供しています。生成AIが解析を得意とする非構造化データはここに集めておくことができます。

その他GainsightのAIを含む機能の詳細に関してはお気軽にお問い合わせください。

AI活用も、構想は大きくスタートはクイックウィンから

AIの活用にカスタマーサクセスチームが得られるメリットと、それに向けたデータ整備のTipsをご紹介しました。

もちろん成果を最大に得られるように活用したいところですが、最初から多くの種類のデータを取り込むために長期間かけるよりは、大きな構想は持ちつつ、小さくても良いので成果の出やすいデータから取り組み、運用しながら広げていくことを推奨します。

三橋秀太 / Gainsight株式会社 プリンシパルソリューションコンサルタント

新卒で日系大手IT企業に入社後、2008年にSalesforceと出会ってからは、B2B SaaSの力により企業の競争力を高めることを軸に、SFA、MA、CSの領域でお客様の変革を提案・支援。2015年からはマーケティングオートメーションのマルケト(及びその後統合されたアドビ)にてソリューションコンサルティングをリード、2023年よりGainsightにてソリューションコンサルティングを中心にカスタマーサクセスの高度化に従事。